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フォトロンが得意とする高性能ハイスピードカメラと、ボリュメトリックキャプチャの技術を融合し、独自技術によって高速現象の3Dモデル動画化を実現した「High Speed Volumetric Capture(ハイスピードボリュメトリックキャプチャ)・HSVC」。フォトロンは世界初のこの技術を実用化し、2023年7月、栃木県に専用スタジオも開設。ここでは、そんなフォトロンのハイスピードボリュメトリックキャプチャについて詳しくご紹介します。
ハイスピードボリュメトリックキャプチャを紹介する前に、まず“ボリュメトリックキャプチャ”とは何なのかを簡単に説明します。
ボリュメトリックキャプチャは自由視点映像技術の一つで、人や空間を360°複数台のカメラで囲み、さまざまな方向から同時に撮影。その撮影動画をもとにデジタル処理を行い、カメラの視点を後から自由に変えられ、自由視点の2D動画や3D動画に再構成するというものです。
スポーツ中継やミュージックビデオなどで、その映像をご覧になったことがあるのではないでしょうか。フォトロンのハイスピードボリュメトリックキャプチャは、そんなボリュメトリックキャプチャ技術を産業向けにさらに進化させたもので、大きな違いは対象を撮影するすべてのカメラにフォトロンが得意とする“高性能ハイスピードカメラ”を使っているということです。
1秒間に1,000枚以上の撮影が可能な41台のハイスピードカメラを使用し、上下左右あらゆる角度から同期撮影を行い、私たちが今まで培ってきたノウハウを投入することで、高速の現象をスーパースロー空間で、自由視点で計測できる3Dモデル動画化することに成功しました。これはフォトロンが完成させた世界初(特許出願中)の技術です。
フォトロンのハイスピードボリュメトリックキャプチャが現在主にターゲットとしているのは、車のエアバッグ開発です。近年自動車に搭載されるエアバッグには、運転席や助手席用だけでなくカーテンエアバッグやニーエアバッグなどさまざまなものがあります。また、自動車メーカーや車種によってもエアバッグの形状やその展開の仕方がかなり違っています。
エアバッグの開発はCAE(Computer Aided Engineering)で行われていますが、エアバッグはどのように折りたたむと効率的な展開が可能なのかなどシミュレーションが非常に難しいとされています。また、シミュレーション結果と実際の実験での差異も小さくなく、結果繰り返し実験を行っています。その都度取得したデータとシミュレーションとで、どれだけマッチしているのかを何度も比較する必要があるため、開発にとても時間がかかっています。
しかし、ハイスピードボリュメトリックキャプチャを使用することでエアバッグが点火してから展開するまでの過程をすべて3Dモデル動画化することが可能となります。得られた3D動画モデルのデータをフィードバックし、CAEのシミュレーション結果と比較することでそのシミュレーション精度を飛躍的に向上させることができるのです。
結果、従来のCAEによる解析シミュレーションだけでは数ヶ月はかかっていたエアバッグの開発が、たった数日に短縮ができ、その開発にかかるコストを大幅に削減することが期待されるのです。
ための設備や治具、照明、データ処理のためのコンピュータシステム、さらにエアバッグ展開と高速撮影を完全に同期する仕組みも必要です。その環境を構築するのは簡単ではありません。
そこでフォトロンでは2023年7月にハイスピードボリュメトリックキャプチャのための専用スタジオ「栃⽊テクニカルセンター」を開設しました。こちらがそのスタジオです。
スタジオには、ハイスピードボリュメトリックキャプチャ専用の櫓(やぐら)が頑丈なトラスで組まれ、上下左右360°あらゆる方向から被写体を撮影できるよう41台のフォトロン製ハイスピードカメラ(FAST CAM Mini CX100)と、何台もの照明が設置されています。
このやぐら内に撮影したい対象を配置(車両本体を中に入れることも可能)することで1秒間に1,000枚以上(1,000fps)以上のハイスピードでの撮影をすることが可能となります。
撮影範囲は幅:約3,000mm×奥行き:約2,000mm×高さ:約2,000mmで、エアバッグなど小型のものから車両などまで配置して撮影できます。そして同期撮影し取得できた膨大なハイスピード動画データはスタジオ内の6台のコンピュータに送られ、合成&最適化され360度の3Dモデル動画となるのです。
完成した3Dモデル動画は、エアバッグの点火から実際にどのように展開していくまでのわずか0.03秒という高速現象が、3Dモデルで自由な視点から検証、確認することが可能です。
エアバッグは表面の布が白地でその形状を3次元情報として取得するのが困難で、それが一つの課題でした。研究を重ねた結果プロジェクターを使い、5方向からエアバッグの表面にパターン(模様)を投影することでこれを解決しました。
ハイスピードボリュメトリックキャプチャを使用することでエアバッグ開発におけるテスト回数の大幅な削減や、シミュレーション作業の短縮化、さらにサプライヤとの情報共有の簡素化(見える化)も期待できるでしょう。また、今までのエアバッグにはできなかったさまざまな工夫や安全性の向上、さらに新しいエアバッグの開発などへもつながっていくのではないでしょうか。
ハイスピードボリュメトリックキャプチャのハイスピードカメラによる同期信号を使用した完全同期撮影や、プロジェクターを使ったパターンの投射などを含め、フォトロンではそのノウハウは2023年5月に特許を出願しました。さらに2023年7月栃⽊県下野市に「栃⽊テクニカルセンター」を開設しハイスピードボリュメトリックキャプチャの有償サービスも開始しています。
エアバッグの開発に限らず、フォトロンでは、今後はハイスピードボリュメトリックキャプチャのスポーツ分野や産業分野、さらにエンタテインメント分野での利用も検討しています。フォトロンが開発したこの新しい技術が、今後どのように発展、利用されていくのか、皆さん是非ご期待ください。
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