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これまで3回にわたって天気予報の仕組みや開発体制、研究開発事例などについて聞いてきました。最終回は、ウェザーマップが進める技術開発や求める人材像についてお届けします。
(写真左から)
ウェザーマップ 山谷享(やまや・あきら)
営業本部 兼 技術開発事業部ゼネラルマネージャー
ウェザーマップ 渡辺正太郎(わたなべ・しょうたろう)
技術開発事業部アシスタントマネージャー/気象予報士/エンジニア
ウェザーマップ 高野雄紀(たかの・ゆうき)
技術開発事業部エンジニア/気象予報士
ウェザーマップ 小林寿代(こばやし・ひさよ)
コーポレートオフィサー/技術開発事業部 兼 予報センター ゼネラルマネージャー
IMAGICA GROUP 四倉達夫(よつくら・たつお)
Advanced Research Group リサーチディレクター
オー・エル・エム・デジタル 取締役
四倉:ウェザーマップがいま注目している技術、今後取り組んでいく技術開発の方向性についてお聞かせください。
山谷:いま私たちがやってるのは16日先までの予報ですが、2週間後にどれぐらい寒くなるかという温度予想も当たるようになってきているので、1ヵ月予報、3ヵ月予報といった長期的ニーズを掘り起こしていきたいと考えています。
四倉:ホテルの予約などのニーズも見込めそうですね。個人的には5分後、30分後といった予報も気になりますが、いかがですか?
高野:短期間予測という需要は確かにありますが、IT大手がディープラーニングを使って研究を進めているので、うちのような規模の会社は別方面に注力していきます。当社は気象データという基盤の部分と、それを人々の体感に近いところで分かりやすく伝えるのが得意ですが、まだ踏み込めていない領域もあると感じています。この温度だとどういう服装になるか、雨の降り方に関しても霧雨とか細かいニュアンスまで踏み込んで伝えていきたいですね。
渡辺:いかに天気予報をカスタマイズ、パーソナライズしていくかですよね。将来的には、ひとりひとり、たとえば出張の多い人や普段外に出ない人、暑がり、寒がりの人など、属性に合わせた情報を届けていきたいと考えています。一旦カスタマイズされた情報に慣れると、「今日一日太平洋側は晴れるでしょう」という全方位向けの天気予報では満足できなくなります。全市区町村ですべての人にパーソナライズした天気予報を届けるには、ディープラーニングや生成AIなどの新技術を採り入れて、いかに早く新しいことをやっていくかが求められていくと思っています。この1年でLLM(大規模言語モデル)が使えるところまで進歩してきたので、あとはLLMに与える気象側の情報をいかに工夫するかです。
四倉:日進月歩ですからね。
渡辺:天気予報を伝える企業としては必ず通らなくてはいけない関門で、この先数年で確実にそういうものができると思います。
四倉:貴社で求める人材像についてお聞かせください。
渡辺:洗濯物を濡らさないといった身近なところから、災害による被害をできるだけ防ぐといった深刻なところまで、気象情報を正しく使っていただければ避けられたであろう事象がたくさんあります。我々は気象情報の提供を通じて少しでも世の中をよくしたいと思っているので、その想いに共感してはたらいてくれる方に来ていただければうれしいですね。必要なことは後から学ぶこともできるので、プログラミングに抵抗感がなく、自主的に取り組める意欲ある方に期待しています。
四倉:貴社のエンジニアはどのような経歴の人が多いですか?
小林:渡辺、高野以外には、自然言語処理や台風の研究をバックグラウンドに持つエンジニアや気象予報士資格も持っているエンジニア、Webアプリ開発を主担当しているエンジニアがいます。
渡辺:技術がわかっていて営業もできる、両方の架け橋になれる人がいればうれしいですね。
山谷:当社の営業職は、気象データや天気予報を要望されるお客様に、実際にどう使うのか、どうしたいかを聞き取り、うちのサービスでどうお応えできるか提案する仕事です。基本はデータ配信なので、ネットワークの技術的なところも少しは分かっていて、お客様に寄り添える方に来ていただきたいですね。
高野:自由度は高いですが、大企業のように半年かけて新人研修というシステムはなく、良くも悪くもある程度自立して動ける人がマッチすると思います。
四倉:気象関連の情報やインフラ知識も必要となると、難易度は若干高そうですね。
小林:まずはインターンとして入っていただければ。私たちも制度を整えてお迎えしたいと考えています。
四倉:ちなみに、貴社で得られるやりがいは?
渡辺:実際に多くの人に使ってもらえることが一番のやりがいだと思います。
四倉:ありがとうございます。ところで、貴社は気象予報士の教育の場もあり、働く場も提供されていらっしゃるわけですが、気象予報士のニーズは今後増えていくでしょうか?
小林:この30年間、さまざまな気象予報士の方を見てきました。気象予報士制度ができた当時はブームで、テレビに出て解説することが求められる時代が続きましたが、最近では「気象✕◯◯」という気象+αの得意分野のある方が注目されています。気象だけでなく、文化や芸術など他の分野にも色々な知識を持っていて、気象や気候変動が社会にどう影響を及ぼすかまで専門的な話ができる気象予報士が、これからは求められていくと思います。
四倉:色々お話を伺ってきましたが、気象って農業はもちろん、発電や日用品・食品の消費行動など、私たちの生活のあらゆる場面で密接に結びついているんですね。
小林:気象情報は誰しも関わりがありますよね。当社としても、お月見といった季節の行事なども含めて、知識や教養につなげられる気象のコンテンツを発信していきたいと考えています。
四倉:以前は、将来的にAI が人間の仕事を全部奪うと言われていましたが、AIはあくまでツール。“ガリ指数”(ガリガリ君の食べたさを予想する指数)なんていう発想は絶対にAIでは思いつかないですよね(笑)。渡辺さんや高野さんもおっしゃっていましたが、将来は、天気予報で「今日は半袖で大丈夫」とか、子ども向けには「長靴を履いたほうがいい」とか、ウェザーマップならではの独自の切り口も出てきそうです。これからも、貴社ならではの気象情報の新しい見方や楽しい発信を期待しています! ありがとうございました。