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気象のプロフェッショナル集団・ウェザーマップの次世代の取り組みに迫る#01 天気予報の精度を高めるため、少数精鋭で最先端の技術開発を

#ウェザーマップ

(後列左から)
ウェザーマップ 渡辺正太郎(わたなべ・しょうたろう)
技術開発事業部アシスタントマネージャー/気象予報士/エンジニア

ウェザーマップ 高野雄紀(たかの・ゆうき)
技術開発事業部エンジニア/気象予報士


ウェザーマップ 山谷享(やまや・あきら)
営業本部 兼 技術開発事業部ゼネラルマネージャー


ウェザーマップ 小林寿代(こばやし・ひさよ)
コーポレートオフィサー/技術開発事業部 兼 予報センター ゼネラルマネージャー


IMAGICA GROUP 四倉達夫(よつくら・たつお)
Advanced Research Group リサーチディレクター
オー・エル・エム・デジタル 取締役

民間気象会社として、企業商品とコラボしたお天気サイトなど、ユニークなサービスでIMAGICA GROUPで異色の存在感を放つ株式会社ウェザーマップ。同社のR&D部門ではどんな研究開発がおこなわれているのでしょうか。 Advanced Research Group(ARG)ディレクターで、オー・エル・エム・デジタル 取締役の四倉達夫がメンバーを直撃し、ウェザーマップのビジネスモデルや研究開発事例について伺いました。

一気通貫で気象情報の提供を手がけるウェザーマップのビジネスモデル

四倉:今回は貴社のビジネスモデルや開発体制、産学連携の研究開発事例などについて詳しくお伺いしていきたいと思います。まずは、貴社の特徴について教えてください。

小林:当社は1992年にお天気キャスター・森田正光の個人事務所として設立され、気象予報の自由化や気象予報士制度の導入に伴い、1995年に気象庁の予報業務許可を得て民間気象会社になりました。その後2015年に、映像を主軸にしたビジネスを展開するIMAGICA GROUPへ加わりました。当時、クリエイターの人材派遣やデータ可視化事業などを行っていたイマジカデジタルスケープ(現デジタルスケープ)と、人材や気象データ活用面でのシナジーがあると考え参画したものになります。現在は、IMAGICA Lab.の子会社として、グループ各社と人材のみならず共同研究やイベント等幅広く連携しています。

当社の事業内容は、気象予報士を放送局に派遣して番組作りをサポートする「気象予報士事業」予報データを作ってコンテンツを配信する「情報提供事業」気象予報士の資格取得を目指す方向けの「教育事業」の三本柱です。気象予報士の活躍の場を広げることを目指し、当社では気象予報士講座クリアというスクールを運営しており、資格取得後もお仕事をご紹介させていただく流れになっています。

 四倉:まさに一気通貫ですね。皆さんのお仕事と入社のきっかけについて教えてください。

小林:技術開発事業部のゼネラルマネージャーをしています。1995年に入社し、森田正光のマネージャーや営業職を経て、2002年頃から情報提供を担当しています。

渡辺:私は大学1年生で気象予報士の資格を取り、翌年からTBS で天気予報をサポートするアルバイトを始め、大学院卒業後に当社に入社しました。専門の統計学を気象に活かして独自予報を作るなど開発業務全般を担当しています。ほかには、毎週TBSの番組で天気予報コーナーの番組作りをサポートしています。番組構成や原稿、解説に使うグラフやCGの作成まで、出演以外は何でもやっています(笑)。

高野:私は気象予報士の資格を高校1年のときに取得し、ウェザーマップに登録していました。大学で気象学を専攻し、ウェザーマップにはアルバイトとして入り、当時は予報原稿を書く仕事をしていました。その後大学院に通いながらアルバイトを続け、2024年4月に正社員に登用されました。勤続10年ですが、新入社員です(笑)。今はエンジニアとして技術開発をメインに、気象データの可視化をするシステムの開発や、新たな予報の開発を行っています。

山谷:私は大学で気象の研究をし、2005年にエンジニアとして入社しました。渡辺や高野のような優秀なエンジニアが入ってきたので、いまは営業にシフトし、営業本部のゼネラルマネージャーとして予報士のサポートなどマネジメント全般を担当しています。

天気予報は平均値から外れているものを見逃さないことが鍵

四倉:皆さんユニークな経歴をお持ちですね。貴社のメイン業務である天気予報ができる仕組みについて教えていただけますか?

渡辺:気象の世界では、昔から気象庁がスーパーコンピュータ上で数値予報という物理学を基本にしたモデルで気象予測の計算を行っていて、民間にも配信しています。気象庁が計算した数値予報は「晴れ時々くもり」のような天気予報の形ではなく、気温や湿度がグリッド状に計算されているだけのものです。それを天気予報にするには翻訳する必要があって、翻訳過程に、過去のこのデータの時は雨がどれだけ降ったなど関係性を作った統計モデル、いわゆるガイダンスと呼ばれるものがあり、気象庁はそれを予報官が読み取って発表しています。

当社は、気象庁のガイダンスに加えて、独自のガイダンスやロジックを作って気象庁の3時間ごとに対して1時間ごと、週間予報に対して10~16日先といった予報を出しています。ほかにも、気象庁が「東京地方」と広くまとめるのに対し、市区町村ごとの細かい予報を作って天気予報として提供しています。気象庁のデータを当社構築のプログラムで独自に処理するイメージです。 

四倉:天気予報の作成ではどの辺りに気を付けていらっしゃるのですか?

渡辺:統計学は、基本的には平均値を当てるというか、頻度の高いものがよく当たる仕組みですが、天気予報の場合は平均値から外れてるものが大事で、大雨や猛暑、寒波などハズレ値なものをいかに見逃さないようにするかが大切なんです。百回に1回、千回に1回の頻度ですが、ハズレ値の重みを高くするなどして対策しています。それでも予報が外れることはあります。数値予報自体が外れてることもあれば、こちらで作っているガイダンスが余計なことをしていることもあるので、どう改善すべきかは常に考えています。十数年前に比べて社内にノウハウが蓄積されてきたので、いまではだいぶ精度が高まってきました。 

少数精鋭で基礎研究から最先端の技術開発まで対応

小林:当事業部は、渡辺、高野を含めた技術開発事業部の正社員8名のほか、気象の基礎研究を行うWeatherMap Lab.(ウェザーマップラボ)の学生さん数名と、業務委託で副業として研究を引き継いでいただいている3名で開発にあたっています。

四倉:幅広い事業を少人数でやってらっしゃるのですね。WeatherMap Lab.について詳しく教えてください。

高野:コロナ禍で、自分が所属していた研究室でアルバイトを募集し、気象予報士の支援サイトで簡単な気象データを可視化したり、気象の基礎技術をディープラーニングで研究したりすることを手伝ってもらい始め、WeatherMap Lab.と名付けました。当初は気象学専門の学生さんが主体でしたが、いまは天気予報を自動生成する自然言語処理などコンピュータを専門にしている学生さんも増えています。

当社は、気象予報士が時季に合わせた服装のコーディネートをお伝えする『Dress the Weather』というアカウントをInstagram で運営していますが、これは学生さんのアイデアから生まれたものです。 

小林:学生さんへの給与はもちろんお支払いしています。若い世代はテレビを持ってない人が多いので、いまは天気予報を届けるにはSNSが不可欠ですね。

四倉:テレビ少年だった自分には考えられませんが(苦笑)、これも時代の流れなんでしょうね。(続く

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