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IMAGICA GROUP ARG(Advanced Research Group)とグループ会社のフォトロンでは、2018年から東京農工大学高木研究室と共同でライトフィールドディスプレイに関する研究を進めています。また、その研究結果を東京農工大学とIMAGICA GROUPと共同で特許を申請しました。
ライトフィールドディスプレイは3次元物体からの光線を再現することで眼鏡なしでの立体表示を実現するディスプレイです。再現する光線の数と解像度の間にトレードオフの関係があるため、十分な品質を実現するには高い解像度を持つフラットパネルディスプレイが必要になります。近年ではフラットパネルディスプレイが高解像度化してきているので実用化が進みつつあります。
我々は、ライトフィールドディスプレイが人の表情を忠実に再現することができ、他のデバイスに比べて人と人とのコミュニケーション、人と機械とのコミュニケーションにおいて優位に働くのではないかと考え、ライトフィールドディスプレイの高品質化や表情を表示した際の主観評価などの研究を進めています。試作したディスプレイは31.5インチの8Kディスプレイをベースとしました。このサイズであれば人の顔が実物大の大きさで表示できるようになっており、図1に示す通り人の表情を表示するのに最適なディスプレイとなっています。
図1 我々の試作したライトフィールドディスプレイ
まずは、フラットパネル型のライトフィールドディスプレイの構成と特徴について説明していきます。従来の構成として、フラットパネルディスプレイとレンズアレイを組み合わせる方法(図2.(a))とフラットパネルディスプレイと開口アレイを組み合わせる方法(図2.(b))が知られています。1つのレンズや開口に複数の画素を対応させ、その画素群からの多数の光線を制御することで3次元物体からの光線を再現し立体表示を実現します。このとき1つのレンズや開口に対応する画素群を要素画像と呼びます。レンズアレイ方式はレンズを用いるために光の利用効率が高く、明るいディスプレイが実現できます。しかし、レンズの収差を考えるとレンズピッチに比べて焦点距離を小さくすることが難しいため視域(自然に立体表示が観察できる範囲)を大きくすることができないことが問題点となります。開口アレイ方式は、開口アレイをフラットパネルに近づけることで視域を大きくすることができます。しかし、光線のクロストークを無くすために開口幅を画素ピッチ程度にする必要があり、光の利用効率が低く暗くなってしまうことが問題点となります。
図2. 従来のライトフィールドディスプレイの方式 (a)レンズアレイ方式 (b)開口アレイ方式
そこで我々の研究では、レンズアレイと開口アレイの両方を用いて虚像結像状態にすることで、レンズアレイを用いた方法よりも大きな視域を持ち、開口アレイを用いた方法よりも高い光の利用効率を持つライトフィールドディスプレイを提案しています[1]。
提案手法を図3に示し、簡単に説明していきます。まず、フラットパネルディスプレイの要素画像とレンズアレイの距離gをレンズアレイの焦点距離fより小さくすることで虚像結像状態にします。この場合、各レンズに対応する要素画像がレンズの後ろ側に虚像として拡大結像されます。要素画像が拡大するため、従来のgとfを等しくする無限遠結像状態を用いるレンズアレイ方式に比べて視域が拡大できます。もしくはgが小さくなったことで視域が拡大するとも考えることができます。また、従来の開口アレイを用いる方法にならって開口の大きさを画素の拡大虚像と等しくすることで、従来の開口アレイ方法に比べて開口幅を大きくすることができ光の利用効率を向上できます。
図3. 近方虚像結像モードのライトフィールドディスプレイ
さらにそのディスプレイの立体像の解像度を高解像度化する手法も提案しています[2]。フラットパネルディスプレイとレンズアレイの距離gを更に小さくすることで画素の結像倍率を下げ、1つのレンズに複数個の画素の拡大虚像が対応するようにします。そのうえで、開口アレイの開口幅を広げて1つの開口を通して複数の画素の拡大虚像が見えるようにすることで、立体像の解像度を向上させることができます。図4に示す通り高解像度化前のプロトタイプAの立体像の解像度は983×720でしたが、高解像度化したプロトタイプBでは1966×720となり、横の解像度が2倍に向上しました。また、光線の数は48本で同じですが、視域角がプロトタイプAでは41°でしたが、プロトタイプBでは48°に向上しました。
図4. 試作したライトフィールドディスプレイの性能
これらの研究成果により、表情を表示するのに十分な品質を持ったライトフィールドディスプレイができたと考えています。今後はこのライトフィールドディスプレイを使用してコミュニケーションを中心として様々な分野への応用を視野に入れて研究開発を進めていく予定です。
[1] K. Fukano, M. Ito, M. Shimizu, T. Kudo, T. Yura, K. Ichihashi, and Y. Takaki, “Light field display using virtual imaging mode,” SID Symposium Digest of Technical Papers, 52(1), 661–664 (2021).
[2] M. Shimizu, K. Fukano, T. Kudo, T. Yura, Y. Masuo, and Y. Takaki, “Resolution Improvement for Light Field Display Using Near Virtual-Image Mode,” IDW ’21, 1–3 (2021).
顔表示に特化した
ライトフィールドディスプレイの研究
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